エクステリア
このエクステリアデザインこそがZ32の存在意義と言っても良いような気がします。スポーティさと、一流ホテルのエントランスにもしっくり納まる優美さを兼ね備えたデザインは、10年以上過ぎた今でも古さを感じさせません。
ワイド&ローフォルム、北米をメインターゲットに開発されたボディは1800mm(2by2)の全幅を有します。日本の道路事情では持て余してしまうそのサイズも、アメリカの道上ではベストサイズのスポーツカーになるんでしょう。
AピラーからCピラーに掛けてアーチ状にデザインされたキャビンは、それまでどうしても間延びした印象を持っていた2by2のデザインを美しくまとめ上げています。しかし、大きく開くリアゲートは、ボディ剛性を著しく低下させる要因になっています。更にTバールーフへとつながるボディは、当時にレベルで見ても、スポーツカーとしての骨格にはほど遠い物があったと思います。せめてリアハッチはガラス部分のみの開口にすれば良かったのに。。
低く押さえ込まれたボンネットは、エンジンの吸気系の配置を低くつぶすことで実現しています。同じVG系のエンジンを積む車と比べてみると、Z32のボンネットがどれだけ低いかが分かると思います。ボンネットにパワーバルジを開けるのを嫌う、北米市場を意識したそのデザインにより、ただでさえ無理に押し込んでいるエンジンルームのクーリングは最悪な物になります。特に当時の日本に蔓延した馬力競争の中で生み出されたターボ車は、スポーツ走行は熱ダレとの戦いになるようです。
フロントのアプローチアングルの低さも異常です(笑)普通の高さの車止めにスポイラーがひっかかります(笑)吊しの状態でこんなに低い車って、国産車では他にないんじゃないかな?
インテリア
メータークラスター脇に集中配置された操作系がその気にさせます(笑)センターコンソールはオーディオユニットのみで、エアコンの操作もメーター脇に配されます。標準装備のオートエアコンは上下2層流独立温調システムを採用していて、ヘッドルームから足下まで最適に温度調節されます。シーマなどよりも凝ったシステムを採用していました。
ただ、自分の思うように吹き出し口の調整が出来ないのは不満が多かったようで、第2期以降H4/8〜はより細かく設定が出来るタイプに変更されました。
グラスルーフであるを除いても、開放感の高いキャビンになっています。いかにもカルフォルニア辺りのフリーウェイが似合いそうですが、スポーツカーとしてはもう少し包まれた感じがあった方が良かったようにも思います。
パワーユニット
元々V6、3リッターエンジンを積むことを前提に設計されており、吸排気系の取り回しは左右バンク毎に完全に独立されています。1.5リッターエンジンを2個付けてるような感じですね(笑)
大排気量の恩恵で、トルクには余裕があります。(アクセルを踏み込んだときのトルクキックは、気筒あたり500cc以上の排気量が理想と言われています)2速だろうが3速だろうが、普通に走る分にはどっちに入ってても関係有りません(笑)
VG30DE/VG30DETT
このエンジン呼称は、既存のVGエンジンと同一ですが、エンジンブロックからクランクシャフト、その他の主要パーツは専用設計でZ32用に起こされた物です。流石はバブル期、金が有り余ってたんですね(笑)
イグニッションもハイテンションコードを使わないダイレクトイグニッションが採用されています。レーシングエンジン並の装備ですな。
足周り
この当時開発された、スカイライン、プリメーラ(フロント)、シルビア(リア)、共に、Z32にもマルチリンクサスペンションが採用されています。
N901運動(90年代でナンバーワンのサスペンションを創る)のスローガンの元に開発されたマルチリンクサスは、地味ですが当時の日産がもっていた技術力の高さを証明する物だと思っています。
フロントサス
エンジンルームに場所をとられて、アームスパンを確保することが難しいフロントサスは、市販車設計の一番難しい部分です。トレッド面は常に路面に平行に当てるのが理想ですが、アームスパンの短いサスの場合、例えダブルウイッシュボーンであっても、直進時のギャップ変化に対応させれば、操舵時にポジティブキャンバーになってしまい、逆に操舵時のトレッド面を最適な値に持っていこうとすると、直進時のキャンバー変化が大きくなり路面追従性を損なうことになってしまいます。
そこで日産は、マルチリンクのアッパーリンクに35°の前進角を付けました。これによって直進時には長く、旋回時の外輪では短いリンクとして作用させ、直進安定性と旋回性能を両立させています。図を見ても分かるように、本来はドライブシャフトが通って、4WDもしくはFFとしてトラクションを稼ぐ足として最適なサスペンションですが、今のところ、これ以上に凝った造りのフロントサスって見たこと有りません。

欠点は、余りステアリングが切れなくて、小回りが利かないことですね。新型のスカイラインやステージアでは普通のダブルウイッシュボーンになってしまいました。あれだけホイールベースが長いと、この形式では本当に曲がれない車になってしまうのでしょう。
リアサス
フロントサスに比べて、余り感心しないのがリアサスです。
当時の日本車は、リアトーを積極的にコントロールしようとする傾向が強く、4WSなんてのも随分流行りました。今、その技術が積極的に使われない事からも、やはり間違った方向に進んでしまったテクノロジーだと言っても良いと思うんです。4WS
のように積極的なトーコントロールじゃなくても、外部からの入力に対し、リアトーを変化させるような仕組みが組み込まれています。

見づらいかと思いますが、一番右側の図、仮想キングピン軸が、リアタイヤの内側に設定されているのが分かりますか?これではトレッド面への外部入力に対してリアトーがグラグラ動いてしまいます。(その様に設定しているんでしょうけど)
実際の路面は轍などによって、想定していない横方向からの入力が掛かります。自分で運転していても、高速道路などのフラットな路面では、どんな速度で走ってもビシッと矢のような直進安定性を示すのに、荒れた幹線道路等を走ると自分の意に反する嫌な横揺れを起こし、かなり気を使うことになります。